AI時代の制作は、「捨てる?」「裏切る?」がキーワードかも
- Design/M

- 6月17日
- 読了時間: 4分
AIがクリエイティブの現場に浸透して、ずいぶんと時間が経ちました。その恩恵は計り知れず、制作の質やスピードを格段に引き上げてくれています。ただ、私たちtable designのスタンスは一貫しています。それは「AIの有無に関わらず、本質的に必要なクリエイティブを作れる技術があること」が大前提。とはいえ、AIが登場するずっと前から、デザインは「どう作るか」よりも「どう使うか」の比重が大きくなると予測していたため、時代に合わせて変えるべきところ、そして頑固に残すべきところを見極める柔軟性も常に持っていたいと考えています。

そんな中、最近の現場で立て続けに起こっている、ある興味深い現象があります。
それは、お客さまがAIを使って作成した資料や、仮のデザインラフを事前に共有してくださる機会が増えたことです。ビジュアルのイメージをすばやく共有していただけるそれ自体は、素晴らしいことです。しかし、それをベースに私たちが本制作をしてご提案すると、なぜか「AIのラフに引っ張られすぎている」「本当に伝えたかったことと少し違う」といった、認識の齟齬が生まれるようになってしまったのです。
原因は、AIの特性にあります。AIが生成するアウトプットは、基本的に「情報てんこ盛り」になりがちです。よほどお互いの文脈を理解したプロンプト(指示文)を書き込まない限り、AIは人間が本当に届けたい「情報の優先順位」までは考慮してくれません。きれいに整ってはいるけれど、本当に大切なメッセージが埋もれてしまっている──そんな資料が量産されやすい環境になっているのです。もちろん、お客さまが完璧なプロンプトまで作れてしまうと、私達の出番は無くなってしまうので、それ自体が問題ではありません。(笑)
クリエイティブにおいて、打ち合わせはお客さまの想いを形にするための最も大切な時間です。これまでの時代は、お客さまから「いかに情報を引き出すか」「会議の場で何を伝えるのか」あるいは敢えて「話をせずに持って帰るか」がクリエイターの腕の見せ所でした。しかしこれからの時代は、目の前にあるきれいなAI資料からノイズを削ぎ落とす「捨てる勇気」こそが、最も重要になってくると感じています。
そうなると、少し言葉は悪いですが、私たちの最初の業務は、お客さまが作ってくださった資料をあえて一度「否定的な目線」で疑ってみることから始まります。「本当に伝えたいのは、この情報ではないのでは?」と、ノイズを削ぎ落としていく作業です。
さらに言えば、私たちはただ情報を捨てるだけでなく、時にはお客さまが用意してくださった「指示書をあえて裏切るサプライズ」を提案する必要もあるのではないかと考えています。お客さまがAIを使って言語化したイメージの、さらにその先にある「本当に表現したかった本質」を掴み取り、「こういう見せ方、想像もしていなかったけれど、こっちの方が断然いい!」と驚いてもらえるような提案。それこそが、AIには絶対に真似できない、人間のクリエイターが介在する最大の価値だと思うのです。
経験を積んだキャリアのあるクリエイターなら、この「捨てる勇気」と「仕掛けるサプライズ」を持ってディレクションができますが、お客さまのペースについていくのが必死な若手クリエイターにとっては、目の前の綺麗な資料を疑い、それを指摘し、新たな提案をすることはなかなか大変な挑戦かもしれません。
私たちは今、クリエイティブの大きな過渡期にいます。便利になったからこそ、人間の「選ぶ眼」や、良い意味で「裏切るセンス」の価値が試されている。この変化の激しい時代の中で、デザインの本質を見失わないためにどうあるべきか、これからもじっくりと現場で見極めていきたいと考えています。
それと同時に、これからの現場を担う若いクリエイターたちにも、自分の意見をどんどん発言してもらえる環境を作っていかなければと思います。お客さまの言葉をただ受け取るだけでなく、若手ならではの視点や気づきを恐れずに言葉にできること。そんな活発なコミュニケーションが生まれる土壌を整えることこそが、これからの制作会社の大切な仕事なのかと思います。


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